会計士が解説!決算書とはどのような書類?自分で作成することはできる?

2022-10-15
SoVa編集部
監修:山本健太郎 (公認会計士)

この記事は以下のような人におすすめ!

  • 決算書とはどのような書類か知りたい
  • 決算書の中身を知りたい
  • 決算書の作成方法を知りたい

ご自身に必要なポイントだけ読めばOKです。それでは早速、解説していきましょう!

※ 記事内容は執筆時点のものです。必要に応じて最新の情報をご確認ください。

目次

決算書とはどのような書類?

決算書がどのような書類かの疑問の写真

決算書とは、その会計年度における会社の利益や損失がどのくらいだったか、会社の財政が今どのような状態かといった、事業に関する収入や支出などを計算してまとめた、会社の業績を表す書類のことをいいます。ちなみに、「決算書」というのは俗称であり、正式には「財務諸表」「計算書類」と呼ばれます。決算書は事業年度終了時に作成し、確定申告の際に税務署に提出します。

決算書の目的

決算書を作成する目的とは一体何でしょうか?決算書は、一年を通しての企業活動の結果が数字で表されることから、「企業の成績表」でもあるといえます。経営・税務・借入・投資活動などのために欠かせないものといえるでしょう。

経営判断のため

決算書を読み解けば、企業の今後の方針を決定する上での手助けにもなります。「経営の羅針盤」であるともいえるのです。このことから、会社経営を行なうために極めて重要なものであるといえます。

税務作業のため

法人税などの税金は、確定した決算書に基づいて納税額を算出します。これを「確定決算主義」といいます。そのため、税務の申告を行なうには、確定した決算書が必要となります。

金融機関などからの借り入れのため

銀行などの金融機関から借り入れを行なう際、ほぼ確実に決算書の提出が求められます。倒産する危険はないか、担保となる財産はあるか、返済するための原資となる利益が計上されている、または将来計上される見込みがあるか、などといった観点から審査を行なう必要があるためです。

投資判断のため

株主や資本家の投資判断の材料のため、資本に対してどれだけ利益を上げられたかを報告する必要があります。企業は、株主や資本家から払い込まれた資本を元に企業活動を行なうからです。

決算書を必要とする人・団体

決算書を最も活用するべきは、経営者やビジネスマンです。また、決算書を読むことで会社の経営状態を判断できることから、銀行などの金融機関が融資の際の判断材料にしたり、投資家が投資の際に用いたりすることもあります。

経営者

会社の成長のためには、決算書から今年度の業績はどうであったかを確認し、さらに業績を上げていくにはどうすべきかを考える必要があります。自社の決算書は会社の業績を改善するための優秀な指標です。決算書から自社の経営状態を判断し、業績を上げるための施策を考え、実行していくことが成長する会社の条件であり、経営者にとって必要不可欠なものといえるでしょう。

金融機関

会社が銀行などの金融機関からお金を借りる際も決算書が必要です。銀行は、会社の信用分析を行なうため決算書の提出を求めてきます。銀行は決算書を見て、その会社に貸した資金を返済する体力があるかどうかを判断し、資金の融資を決定します。

投資家

一般の投資家も、投資の判断材料として決算書を利用します。株の購入を検討している会社の決算書を見て、その会社がこれから儲かるかどうかを判断するのです。

決算書の書類の種類

決算書の書類の種類を表す写真

決算書は、会社法・法人税法・金融商品取引法といった法律の目的の違いによって提出する書類が異なってきます。決算書の書類には、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、計算書類の附属明細書、事業報告書などがあります。

貸借対照表

貸借対照表は、会社の一定期間における財政状態を明らかにするための計算書です。この書類を読み解くと、会社の資金調達からその運用状況までを把握することが可能です。貸借対照表には、事業年度末においてのすべての資産・負債・純資産を表記します。式にすると「資産=負債+純資産」となり、左右の金額が均衡状態にあることから、B/S(Balance Sheet)とも呼ばれます。

貸借対照表の役割

貸借対照表は、事業における一時点の資産と負債、総資産の状態を表しており、決算時の残高の一覧のようなものです。貸借対照表を読み解くことで、その会社の財務内容や税務状況を把握できます。特に、貸借対照表から「自己資本比率」や「流動比率」を割り出すことで資金繰りの安全性を確認できるでしょう。

貸借対照表の構成要素

貸借対照表 (B/S)の写真

貸借対照表を構成する要素として以下のようなものがあります。

  • 資産の部:流動資産、固定資産
  • 負債の部:流動負債、固定負債
  • 純資産の部:資本金、利益剰余金

資産の部は、会社が保有している資産を表します。1年以内に現金化できる資産は流動資産に、現金化できない資産は固定資産に分類します。

負債の部は、資産をどのように調達したかを表しています。1年未満に返済できるのであれば流動負債に、返済できないのであれば固定負債に分類します。他人由来の資金のため、「他人資本」と呼ばれます。

純資産は、株式の資本金や利益の積み立てと、株式資本以外の利益剰余金に分けます。返済する必要性のある他人資本と区別するため、「自己資本」と呼ばれます。

損益計算書

損益計算書は、収益から費用を差し引いて、会計年度1年間分の利益を把握するための計算書です。P/L(Profit and Loss Statement)とも呼ばれます。

損益計算書の役割

損益計算書を読めば、1事業年度の経営成績を明らかにすることができます。経営成績とは、利益の大きさと発生過程をいいます。収益・費用・利益の3つの状態を分析することで、事業のどこに問題があるか把握することができるのです。

損益計算書からわかる5つの利益

損益計算書 (P/L)の写真

損益計算書には、収益・費用・利益の3要素が記載されています。商品やサービスを販売することで得た売上高から費用を差し引いて最終的な利益を算出します。損益計算書から読み取れる利益の区分には、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つがあります。それぞれ、以下の計算式で求められます。

  • 売上総利益=売上高-売上原価
  • 営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費
  • 経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
  • 税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失
  • 当期純利益(純利益)=税引前当期純利益-法人税等(法人税+法人住民税+法人事業税)

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は、1事業年度のお金の流れを表し、現在手元に現金がいくらあるのかを把握できる書類です。中小企業には作成義務はありませんが、上場企業の場合、決算時に作成することが義務付けられています。C/S(Cash flow Statement)とも呼ばれます。

キャッシュフロー計算書の役割

損益計算書でも収益や費用などのお金の流れは分かりますが、実際の現金の流れと書類が一致しないことがあります。例えば、将来的にお金が入ってくる売掛金や、将来的に仕入れの支払いを行なう買掛金のような掛取引を行なっていると、損益計算書の上では売上となっていても手元には現金がない、または仕入れがあっても現金が出ていっていない、というようなことが起こり得ます。キャッシュフロー計算書を見れば、このようなお金の出入りのずれを確認することができます。損益計算書で不足している点をカバーする役割があるといえます。

キャッシュフロー計算書の分類

キャッシュフロー計算書では、お金の流れを、営業活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフローの3つに分類して記載します。

営業活動によるキャッシュフローは、本業の営業活動により生み出した現金の流れのことです。キャッシュフロー計算書の冒頭に表記される数字で、マイナスが続くと倒産リスクが高まります。

財務活動によるキャッシュフローは、資金調達をした借り入れ金の返済による現金の流れです。資金調達の方法として、株式発行、社債発行、金融機関からの借り入れなどがあります。財務キャッシュフローは、借り入れをするとプラスに、株主に配当金を分配するとマイナスになります。

投資活動によるキャッシュフローは、設備投資や有価証券などへの投資による現金の流れのことです。投資のため通常はマイナスですが、資産を売却した場合などはプラスとなります。

株主資本等変動計算書

株主資本等変動計算書は、1年間の株主資本の変動を記載した書類です。貸借対照表の「純資産の部」における1会計期間で変動した額のうち、主に株主資本の各項目で変動したお金の流れや変動した原因が把握できます。会社法によって計算書類として設定されており、全ての会社に作成義務があります。ちなみに、合同会社においては「社員資本等変動計算書」と呼ばれます。

個別注記表

個別注記表は、貸借対照表や損益計算書など、各決算書類に記載した注記事項を一覧にしてまとめた書類です。個別注記表も会社法によって設定されており、会社計算規則に則って重要な注記区分に区別して表記するよう定められています。

計算書類の附属明細書

決算書の内容を補足する重要事項などを記載した書類です。

事業報告書

事業報告書は、1年分の会社の状況や事業の概況を記載した書類です。株式会社の状況についての重要事項や、株式会社の業務の適正を確保するための体制の整備についての決定、または決議内容および体制の運用状況などを表記することが定められています。加えて、事業報告の附属明細書には補足事項を記載します。

決算書の書類作成の流れ

決算書の書類の作成ステップを表す写真

ここでは、決算書作成の流れについて説明します。決算書の書類作成の流れは5つのステップに分けられます。決算書作成の5ステップをそれぞれ解説していきます。

STEP 1. 会計年度1年分の記帳を行う

法人決算の最初の作業は、当年分の記帳を完了させることです。法人決算は帳簿に基づいて進めていきます。帳簿とは、事業の取引やお金の流れを記録するもので、決算の際には全ての取引の記帳が必要になります。特に法人の場合記帳するべき情報が多く、日頃からこまめに記帳をしておかないと後々膨大な作業量になってしまいます。慌てて記帳をするとミスの原因にもなります。記帳はできる限り溜めずに行なっていきましょう。

STEP 2. 試算表を作成する

当年分の記帳の確認・保存を終えたら、続いて試算表を作成します。試算表は、決算書作成前に作成する集計表であり、「総勘定元帳」に基づいて作成します。試算表を作成したら記帳の整合性を確認します。試算表の借方、貸方の合計値は必ず一致していなければなりません。合計値が一致しない場合は仕訳やデータ入力に間違いがあることになります。

STEP 3. 決算整理仕訳を行う

続いては決算整理仕訳を行ないます。期中に行った仕訳の修正や追加を行なう作業です。つまり、決算書の作成の前に、処理していない取引を整理するのです。具体的には以下のような処理を行ないます。

  • 売上原価の計算
  • 経過勘定の計上
  • 減価償却費の計上
  • 有価証券の評価替え
  • 各種引当金の計上

決算整理仕訳が完了したら、改めて試算表を確定させます。

STEP 4. 決算書を作成

決算整理仕訳を完了させ試算表が確定した後は、年間の収支や財産状況をまとめた「決算書」を作成します。法人においての決算書作成に必要な書類は8種類です。なお、「決算書」は通称であり、会社法では「計算書類」、金融商品取引法では「財務諸表」と呼びます。

STEP 5. 税金に関する申告書を作成

決算書を作成したら、法人税申告書を作成し納税を行ないます。法人税申告書は、1年間の利益に対して企業が支払う法人税の計算に必要となる書類です。法人が申告・納税する税金には以下のようなものがあります。

  • 法人税
  • 消費税
  • 法人事業税
  • 法人住民税
  • 地方法人税

提出先および納税先は各税金ごとで異なるため注意が必要です。また、申告書の提出と各税金の納付の期限は原則、期末日の翌日から2ヵ月以内と定められています。

会計士による決算書の書類に関するワンポイントアドバイス!

会計士の写真

決算書の作成を税理士に依頼するべきかどうかは思案のしどころですが、税理士に依頼する最も大きなメリットは、決算処理に掛かる手間が省けるというところです。決算処理には正確性が求められる上、煩雑な計算も多くあることから、膨大な時間が掛かります。また、もし決算書が誤っていた場合、税務署から修正するように指摘される可能性もあります。税金のスペシャリストである税理士に任せれば、決算処理のミスや本来の業務への支障を軽減することが期待できます。

まとめ

今回は、

  • 決算書とはどのような書類か知りたい
  • 決算書の中身を知りたい
  • 決算書の作成方法を知りたい

について解説しました。

決算書は、税務申告のために必要な書類というだけでなく、会社の資金繰りや経営状況を把握できる重要な書類です。しかし、税金や会計の知識なく自力で決算書を作成するのは大変難しく、特に法人における決算書の作成は税理士に頼むのが一般的といえます。決算の直前になって慌てないよう、しっかりと準備しておきましょう。

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